「親が住んでいた土地建物を相続したが、自分で住むつもりはない。」
「売ってもあまりお金にならないし、しばらくそのままにしておこうかな。」
よくあるケースだと思います。

しかし、空き家が問題となっている昨今、そのままにしておくと防犯・防災上問題になるケースもありますし、早期に売却をした方が税金が有利となるケースもあります。
 

1 相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例(支払った相続税が経費に?)

相続により、取得した土地、建物等を、その相続があった日かの翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡した場合には、支払った相続税のうち、その譲渡した土地、建物等に係る部分の金額を取得費とする事が出来ます。
 
例えば、
所有期間 30年(親から相続、親が30年前に購入)
売却価額 4,000万円(取得費は不明)
仲介手数料など売却に係る経費 300万円
譲渡した人の相続税の課税価格 1億円
支払った相続税の額 1,820万円
譲渡した土地、建物等の相続税の課税価格 3,000万円

 
上記のような場合には、譲渡所得の計算は次のようになります。
 
通常の場合
売却価額  40,000,000円
取得費 40,000,000円×5%=2,000,000円
譲渡費用 2,500,000円
譲渡所得金額 40,000,000円-(2,000,000円+2,500,000円)=35,500,000円
35,500,000円×(15.315%+5%)=7,211,825円(所得税、住民税)
 

相続税の申告期限の翌日以後3年以内の譲渡の場合
売却価額  40,000,000円
取得費 40,000,000円×5%=2,000,000円
18,200,000円×30,000,000円/100,000,000円=5,460,000円
2,000,000円+5,460,000円=7,460,000円
譲渡費用 2,500,000円
譲渡所得金額 40,000,000円-(7,460,000円+2,500,000円)=30,040,000円
30,040,000円×(15.315%+5%)=6,102,626円(所得税、住民税)

 
税金に約110万円の差額が生じます。

 

2 被相続人の居住用財産(空き家)を売った時の特例

相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等を平成28年から平成31年12月31日までに売って、次のような場合には、譲渡所得の金額から最高3000万円まで控除することが出来ます。
 

1.適用対象となる居住用家屋
・昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること(区分所有建築物は対象外)
・相続開始の直前において被相続人の居住用であり、かつ被相続人以外に居住者がいなかったもの

2.対象となる譲渡
・被相続人の居住用家屋(その敷地を含み、また、家屋が耐震性のない場合は、耐震リフォームしたものに限ります。)
・被相続人の居住用家屋を除却した後の土地の譲渡

3.譲渡時期
・相続開始の日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること
・相続発生日が平成25年1月2日以後であること

4.譲渡金額
・譲渡金額が1億円以下であること
 
簡単に言うと
「1人暮らしの親が住んでいた自宅を相続して、その後、使用しないで耐震リフォーム等をして売却又は建物を取り壊して売却した場合には、譲渡益から3,000万円を控除できる」と言うような感じです。
 
この特例は、1の取得費加算の特例とどちらか一方の選択適用となります。
 

3 空き家は固定資産税の増税も

住宅用の土地については、固定資産税の課税標準が住宅1戸につき、200㎡までは1/6、200㎡超では1/3と他の用途の土地と比較して優遇されています。
 
「古屋を取り壊したら、固定資産税が何倍にも増えた」という話を聞くことがあります。
これは、人が住んでいない住宅用家屋の敷地となっているような土地も「住宅用の土地」とされてきた為、取り壊しによりその優遇措置がなくなり、結果として増税になっている為です。

固定資産税の節税の為、取り壊されない危険な空き家が増えてきているという事で、平成27年に固定資産税の改正がありました。

  1. 倒壊等著しく保安上危険となる恐れがある状態
  2. 著しく衛生上有害となる恐れがある状態
  3. 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
  4. その他周辺の生活環境の保全を図る為に放置する事が不適切状態

上記のような場合には「特定空家等」と判定され、住宅用の土地の対象から外される事になります。

 

利用する予定がないのなら3年以内の売却を検討

小さいころ、「自分が育った家なので売るのが忍びない。」なんて気持ちもあるでしょうし、「もしかしたら将来的には利用するかもしれない。」と考えるかもしれませんが、建物は使わないと痛みが進むと言いますし、使っていなくても固定資産税などの維持費がかかります。

売却するにしても、活用するにしても出来るだけ早く判断しましょう。